『Meta Højskole』を書く

探究の場。

『Meta Højskole(メタホイスコーレ)』。

早いもので、開講から一年半。今のところ、面白い場であり続けている。

Facebookでその活動の一部をシェアしている。それを見てくださっている方々から、「投稿をみる限りでは、よくわからない…どんなものか何やってるのか説明してよ」ということをよく聞かれる。一言でいってしまえば、「人類学と芸術表現を基礎とした探究の場」なのだけど、そう説明したとして、あまり伝わるものでもなく、いつも説明に窮している。おそらく、説明された側も窮していると思う。

こういう経緯から、Meta Højskoleの開講のきっかけや考え方、その活動の様子を、何回かに分けて書いていこうと思う。あくまでも可能な限りの範囲で、ということだけご承知おきいただきたい。生い立ちから始まり個人の私的なことも多く話される場であるから、開示しかねることもあるし、それ以上にそもそも言葉にできないことも起きているからだ。そういう性質のものを「書く」ことは非常に大変そうだけど、何とかやってみようと思い立った。

さて今回は、Meta Højskoleの開講前夜の話を書こうと思う。早く活動内容を知りたい、教えてくれ、ということもあるだろう。けれど、実は開講前の話がこの場の性質に大きな影響を与えているといっても過言ではないので、ぜひ知っていただきたいし、私自身も忘れないうちに書き留めておきたい。

開講前夜のこと

Meta Højskoleは2019年4月に開講した。企画や準備はその前年2018年の11月ごろからであった。その頃、呼びかけ人である私は、とにかく自分の写真で何かをやりたいと思っていた。誤解を恐れずに言えば、アートの世界で言われる自主制作や表現を行いたいと思っていた。

そのことをMETAのデザイナーである増田(ますぽよ)に相談したところ、自主制作の個別指導をしてくれることになった。とある写真家の講演を一緒に聞きにいく時だったと記憶している。この頃から活躍中の写真家やアーティストの話を聞きにいっていた。なぜだか知らないが、写真を撮ってSNSにアップするだけでは物足りない何かを抱えていたのであろう。ともかく、そういう制作や表現のプロセスに自分を放り込みたい、という想いから、自主制作の個別指導、通称『増田塾』が始まった。

増田塾では、ますぽよ先生から制作課題が提示される。これに対して、生徒である佐藤が調査や思索をし表現する、それを何回か繰り返しながら制作物をつくっていく、という方法がとられた。抽象的な問いと課題が提示され、それに取り組むのである。ますぽよ先生は東京藝術大学出身であり、そこで自分が教わった方法しかしらず、その方法で進める、とのことであった。この過程において、藝大で行われているカリキュラムの一つ、修練の一つとしての芸術の仕方を体感したのであった。僅かながらではあるが。
(ちなみに、風の噂では、藝大の入試で、「絵を描きなさい。」という問題が出題されたそうだ。本当にそれだけの問い。なんということだ。)

そんな折、メタを会場にして開催されていた人類学研究会の話が繋がってしまった。

この人類学研究会は、私の友人で詩人・アーティストの松島こうすけ(こうすけ)と案内人の岡村さくらさん(さくらさん)が共に開いたゼミである。毎回、発表したい人が発表したいことを発表し、案内人が人類学の考え方や方法、先行研究を紹介し、その一端に触れるというものだ。ここで聞いた人類学研究の仕方と、ますぽよ先生から教わった藝大における芸術の仕方が重なったのである。

芸術の仕方、人類学の仕方から生まれた

両者の仕方とはどういうものか?誤解を恐れずに示すとすれば、両者の仕方は「観察を行うことによる自己の変化を通じて、他者と向き合うこと。そして、何らかの形でそれを表現すること」である。探究や表現の対象となる他者と向き合うことで、自己をあらためて知る、予期しない変化を否応なく伴ってしまう。それも身体のレベルで、である。これは、文字を読んで知ったというだけの変化ではない。本を読んで知った知識であれば、忘れてしまうことあるだろう。そうではなく、もう知る前には戻れないという類のものである。例えるなら、美味しいものを食べたら、もうそれより美味しいと感じられないものは食したくない、というような。そういう身体的で生理にも近い本質の変化と言えると思う。そういう変化を過程として受けいれざるを得ない仕方なのであると私は理解している。

まさに、そんなことを感じていたところに、私の芸術の師匠であるますぽよと、人類学の先生であるさくらさんが、偶然にMETAに居合わせたのである。そこで、人類学と芸術の仕方の話しで盛り上がり、とんとん拍子で何かやろうということになってしまったのである。そして、ますぽよには芸術表現面での案内人に、さくらさんには人類学面での案内人に、とお願いさせていただき、いよいよ「人類学と芸術表現を基礎とした探究の場」があらわれたのである。

こうして、私の「何かしらを写真で表現したい」というあまりにも個人的な欲望と、「人類学をもっと真剣に体感したい」という絶望的ともいえる稚拙な好奇心が混ぜ合わさって生まれたのが、探究の場 Meta Højskole である。そして、幸か不幸か、興味を持ってくださった方が10名以上も!スケジュールも内容もハードである(抽象的だし)にもかかわらず、8名の方が探究を共にしてくれることとなった。本当にありがたいことだ。
(第2期に入り、追加募集を行ったところ、さらに4名の方がジョインしてくれた。また他にも、研究者の方々数名が、柔らかく関与してくださっている。奇跡に近いとしか言いようがない、、、)

ちなみに、 Meta Højskoleの名前の由来は、デンマークの学び舎であるFolke Højskoleからきている。Folke Højskoleは、社会に出て仕事の忙しさにかまけて探究したいことができない、そんな人たちが、「自分についての、自分の立てた、自分に向けた問い」と「その応答となる表現」を探究したい、と思った人に開かれた学び舎のようなもの、と私なりには理解している。(様々な説明があると思うので詳しくはここで記載しない。)

とにもかくにも、

「わたしの問い、わたしの表現」

これをテーマに、Meta Højskoleはいよいよ開講することになったのであった。