駅にはいろいろな貼り紙があります。プロが作ったポスターに紛れて、駅員さんが作ったであろう、A4だかA3の紙に1文字ずつ文字を入れて作って、場合によってはラミネート加工を施され、並べられたあれが本日の主人公。

そうこれです。この写真のバージョンは私の中ではじめてのパターンだったので、思わず階段を引き返して写真を撮りました。

この駅員さんお手製貼り紙が『階段』に貼られる場合、それぞれの駅によっての対応策が異なるのです。何人かの駅員さんが集まって、どうやってこの貼り紙を作成し、貼り付けるかについて相談している姿を想像してしまいます。

私が見たものと、考えられるパターンをまとめてみることにしました。

地面(G)が水平か階段のような傾斜であるか、紙(P)が水平か傾斜しているか、文字(L)が水平か傾斜しているか、まずは3つのパラメータがあります。これをそれぞれ、GPLとします。そしてさらに添字によって詳細を示しています。

*それぞれの項目にある水平、傾斜は重力方向に対して、とします。またPaperの要素にある天井揃えとは紙の上部の面が揃っているかどうかを意味します。

groundが水平の場合は、紙も文字も全て水平。記号で表すと、Gp×Ppa×Lpjとなります。

(と分類しましたが、一々、追っていくと気が遠くなるので、イメージだけ追って行くのがおすすめです。)

では、階段やエスカレターのような地面が傾斜の場合、つまりGrの場合、どんな貼り方があるでしょうか

地面が水平ではないですから、工夫が必要になってきます。何を基準に考えるか。ポスターに文言が書いてあるならば、一枚の大きな紙に文字をレイアウトすることになるので、どう紙(P)を貼るのかというP問題、そして、紙(P)に対してどう文字(L)を配置するかのP-L問題。わかりにくいので絵で表すと、こんな感じ。

上記の場合、P-L問題については、たいてい紙の縦横のどちらかに平行に文字はレイアウトされます。言い換えれば、PpならばLp、PrならばLr、とLの添字はPの添字に依存します。ポスターの紙(P)を回転すると文字(L)も一緒に回転するイメージです。P問題(紙の貼り方)は、水平(Pp)か傾斜(Pr)かの2パターン。すなわち、Pがどちらかに決まれば、Lも自動で決まリます。

このポスターの貼り方はだいたい、私の脳内統計上は左側のパターンで占められているようです。




では、駅員さんのお手製の場合は、どうなるでしょうか。つまり、A4か何かの紙に1文字ずつ文字を入れて作ってあり、ラミネート加工を施し、並べたあの貼り紙の場合です。まず、次の4パターンが考えられるでしょうか。

G:いずれも地面は傾斜なので、Grは共通

P:左上 Ppa(水平_天井揃え)、その他Pra(傾斜_天井揃え)

L:自由度が増えすぎて、まとめられなくなってきます。

右上:文字は紙面に対しては水平にレイアウトしていますが、貼るときは、傾斜をつけています。

–左下:左上のバージョンの全体を地面の傾斜と同様に回転させたはいいけど、紙面の中の文字に鉛直下向き重力が働いています。

–右下:さらにA4で分割して貼ることで、横書きに加えて縦書きの可能性まで出てきたようです。位置の高い方から読むことを優先するか、左からの横書きを優先するか(左下図=写真の配置)、ここでも駅員さんの苦悩が見られます。さらにこれを作るときに、駅員さんは紙に対して文字を何度回転するか測ったのでしょうか。そう思うと、苦労がそこはかとなく感じられる作品となります。

余談ですが、トラックの車体の文字が左から右でなく、右から左に書かれていたりしたのを思い出します。そんな時代もありました。

まだありました。紙を階段のように段々に貼ることで角度を演出しつつ、紙は水平に置く。これは、貼るときに何cmずらすか計算しないと、階段の傾斜と合わなくなりそうです。駅員さん、計算もします。紙がポスターからA4に分解されることで、いきなり自由度が増えてしまいました。

ところで、NYのマンハッタンにあるグッゲンハイム美術館の展示スペースは貝殻の中のようにらせん状に作られていて、展示する側からしたら、重量方向に水平に展示するか傾いた床に平行に展示するかを悩ませる美術館であるらしいです。国境を超えて日本の駅員さんと同じ悩みを共有できそうです。

 

気にならない人は気にならないけど、気になる人は気になる。少なくとも私にはとっても気になる駅の張り紙のお話しでした。